スタッフブログ
2026.01.28
エコバウ建築ツアー(欧州視察) ⑦
おはようございます!
今週、こども達と「パンどろぼう展」に行くことが決まっている中桐です(笑)
さて、今日はいよいよエコバウ建築ツアーのレポート最終回のつもりでしたが長くなりすぎました…
ということで、やはり最後のまとめを別ブログ⑧とし、全8回としますm(_ _)m
(#もはや備忘録ですね…笑)
今回は視察としては最後の6日目です!
ここで一度整理しておきますが、このエコバウ建築ツアーは全9日間の日程で組まれております。
この6日目というのは、視察の6日目でして、ツアーとしては7日目にあたります。
このあとのツアー8日目と9日目は帰国の為の移動日ですので、実質この日が視察最後の日となります。
(#余計ややこしいですか…笑)
また、このシリーズをまとめて読みたい方がいらっしゃいましたら、このページのブログ内検索の欄に「エコバウ建築ツアー」と入れていただくと、①~⑦(今回)まで一覧で出ますのでやってみてください!(#いる?…笑)
6日目 -day6-
こちらに来て以来、読んで頂いている方は分かって頂けると思いますが濃厚な毎日を過ごしていました。
帰国して、振り返ってみると、この日が私にとって最も印象深い日となりました。
ローテクからハイテクへ、そしてハイテクを超えたローテク、更にその先への挑戦を感じた建築事例の視察です。
朝早くいつものようにバスに乗り最初の目的地Wetzikon(ヴェッツイコーン)村へ向かいます。
移動中、恒例の滝川さんによる「スイスの今」レポート(※サラッと始まるこのお話がかなり重要です)
今回の要点は以下↓
■滝川さんのバスでの話
スイスのエネルギーベンデ(Energiewende)について。
エネルギーベンデとは直訳すると「エネルギー大転換」。
スイスではそんな政策が進んでいます。具体的には、スイスの現在のエネルギー構成は、約7割が再生可能エネルギーで、残り約3割が原子力(4基稼働)となっています。
ただし、その原発はいずれも建設から50年以上経過した老朽原発。
競争力はすでになく、2010年・2025年を節目に、脱原発へと舵を切っているとのこと。
そもそも7割が再生可能エネルギーってすごいですよね。
ちなみに日本はというと現在↓のように2023年度で22.9%と2割と少しで、2040年の見通しとしても4~5割です。
15年経っても今のスイスに追いついてない。その頃スイスや環境先進国はどこまで進んでいるのか?
ここでも差を感じますし、なにより、このことを日本では多くの方が当たり前のように知らない。
知らされていない。無関心という事実に怖さを覚えます。

スイスが目指すのは気候中立。太陽光と風力が2トップで、建物と交通を含めた社会全体の電化が前提となっています。
街を走るトラムは完全電化とし、自動車はEV化が進む一方で、「すべてを一気に電化する」のではなく、使わないエネルギーをどう減らすかが先に語られている、そんな状況です。
この話を踏まえスイスのエネルギー政策と、それを実際の建築・暮らしの中でどう実装しているかも体感する一日でした。
■集合住宅claywoodプロジェクト
ここが、本当にすごかった!



ここではまず若手建築家の方から自分達が今取り組んでいることの歴史を踏まえたプレゼン。

20年前のローテク建築と、10年前のハイテク建築を比較した結果として見えてきたのは、設備に頼りすぎた建築の限界。
その歴史を学びながら、これからできること、していくべきことして、「技術で解決する前に、設計や思想で減らす」
最も衝撃的だったのは「新しくつくらずにつくること」への徹底ぶり。
そしてCO₂を出さない、吸着する、再利用することへの執着です。
例えば既存の太陽光パネルを屋根ではなく外装材として使う、カーシェアリングや自転車前提の暮らし、建設機械も電動でしかも工事に先駆けて太陽光を設置し、その電力で工事用電力も賄う徹底ぶり、他にもいくつかあげると、
・コンクリートを極力使わない
・レンガを粉砕する機械も自作
・ヘンプ、粘土粉、瓦の粉、土を使った独自ブロック
このレンガブロックに関しては、強度試験も連邦の試験場で実施しており、念の為構造材としては使っていないものの、「構造に使える」という試験結果は得ているというから驚きです。さらに続けると、
・他現場の材料をリユース
・キッチン、金属窓、シャッターも再利用
・鉄骨もリユース
・プラスチック再生パネルの活用






スイスには、リユース材を流通させる市場(いわば建築版メルカリ)が存在し、「まだ使えるものを使う」ことが社会として成立しています。
もちろん、中古品を多用しているので人によっては、賛否あり批判を受けることもあるそうです。

でも、「新しいものをつくるには、必ずエネルギーがかかる。」
この現実から目を逸らさない姿勢が、すべての判断の根底にありました。
私は、このプロジェクトを本気で推進し、実行し、現実につくりあげ、そこで人が生活をし暮らしが始まっているという一連の事実に衝撃を受けました。
構想だけではなく、やってのける強さ。この国の未来を感じました。日本はどうですか?
■「なぜそこまでやるのか?」
印象的だった問いと答えがあります。
スケジュール上、質問時間はなかったのですが、一つだけどうしても聞きたくて帰り際、無理やり滝川さんに聞いてもらいました。
それは「あなた達はなぜ、そんなにも意識が高いのか?なぜそこまでやるのか?」という直球の質問です。
その答えは、二人とも目を見合わせ【なんでだろう?】みたいな感じで、意外にもスっと出てきませんでした。
二人から言わせると、なぜそんなことを聞くのだろう?といった感じだったのかもしれません。
私は、ここにこの国の凄さを感じ、思わず「これだっ」と思いました。
理由として【好きだから】はあるでしょうが、【持続可能な社会のため】とか【未来のために】とか、この類の言葉はおそらく後付けで、まだ20代のこの若手建築家は生まれた時から、この国の環境意識の中で生きている。
合理性だけではなく、価値観として腹落ちしきっていて、あたりまえに身に沁みついている感覚なのだと。
そして、彼らがつくる建築そのものが、その環境意識をまた後世へつないでいく、メッセージとなっていくのだと。
これが日本にはまだない。まだ少ない。
教育を含めたこの環境を作ること、これこそがこれから私達、地域工務店が「性能のその先」にやっていくべきことだ。
そう心に深く刻んだ日となりました。
■都市のインフラとしての「緑」とチューリッヒの夜
この日はその他にも、巨大ホームセンターや、滝川さんに解説してもらいながらの屋上緑化の事例、坂茂氏に設計の新タメディア本社ビルなど、チューリッヒにてトラムに乗りながら街歩きをしギリギリまで建築に触れていた日でした。
一点だけまとめると、チューリッヒでは、ヒートアイランド対策、生物多様性、洪水対策から、平屋根の緑化が義務化され、その分、下水道料金が安くなるなど、市民にとってのメリットも明確に設計されています。
緑は「趣味」ではなく、都市インフラとして機能しているそんな街であり、取り組みをしていました。



これは、余談ですが、最終日の夜に参加したメンバーとチューリッヒの街を電動キックボードで駆け抜け、高台から皆で見た景色もかけがえのないものとなりました。

■6日目のまとめ
6日目を通して感じたのは、スイスではサステナブルが「意識の高い人の選択」ではなく、社会の前提条件になっているということ。
エネルギーをつくる前に、まず使わない。新しくつくる前に、使えるものを使う。
その積み重ねが、結果としてエネルギー政策にも、建築にも、都市にも表れている。
「ここまでやる必要があるのか?」ではなく、「ここまでやらない理由があるのか?」
6日目は、そんな問いを突きつけられた一日でした。
そして、取り巻く環境が人にあたえる「無意識のあたりまえの壁」を改めて感じました。
まだまだ、やるべきこと、やれることがありそうです。
次回が本当に最後となります。
全体通してのまとめを書いて完結です!
それでは、素敵な一日を!